介護施設に関するお話
さらに、もし阪神・淡路大震災級の直下型大地震が東京都心部を襲えば被害は約八二兆円に達すると推計されている。
これに全国あちこちの地震帯で起きるかもしれない大地震の想定被害額を加えれば、相当な金額になる。
だが、ほほ同時に全国各地の異なる地震帯に属する地域でいっせいに大地震が起きる確率はほとんどゼロに等しい。
急性白血病で救急車で運ばれている最中の患者が、交通事故に遭うようなものだ。
ところが、日本列島をすっぽり覆うような広い地域での集中豪雨では、国民の実物資産の四分の三が集中している海岸沿いの沖積平野がいっせいに被害を受けるといった事態を、十分想定しておかなければいけない。
とくに国民資産の非常に大きなパーセンテージが集中している首都圏には、集中豪雨型の水害が発生した場合に、大きな危険のある地域がいたるところに点在している。
たとえば、大雨で足立区北千住付近の荒川の堤防が決壊して、周辺一帯が浸水したとする。
コンピューターシミュレーションによれば、この北千住であふれた水が地上から都心を襲うまでには約二六時聞かかるが、地下鉄の駅に流れ込んで線路やホームを伝っていけば、わずか三1五時間で都心の大手町付近に達すると想定されている。
しかも、荒川下流の氾濫危険地帯には地下鉄などの大規模な施設だけでも九七ヵ所の地下空間があり、そのどれもが危険ゾーンだと考えられている。
この豪雨被害シミュレーションで想定している降雨量は三日間で五四八ミリ、二年に一度の大雨ということになっている。
しかし、現に二000年九月の東海地方の集中豪雨では似たような雨量が記録されている。
最近の日本列島をめぐる気象条件の変化を考えると、こうした豪雨が発生する確率は、二年に一度というよりはるかに高いと考えておいたほうが安全だろう。
そこで対策だ。
土木工学の専門家によれば、たとえば東京都心部の資産が集中している地域に大口径の立坑を数本掘って、この立坑同士を大深度地下で横穴でつないで、単独の立坑では吸収できない雨水の急増にネットワークとして対処するという方針がいちばん現実的らしい。
東京地区ではすでに御茶の水付近に神田川地下放水池として一本だけ完成しているが、予想される浸水・冠水被害の大きさを考えると、一本だけではほとんど意味がない。
最低でも七1八本を戦略的要所に掘り進み、しかもこの立坑同士をトンネルでつないで、一本だけでは吸収しきれない水量をネットワークとして吸収するシステムを作っておくことが重要だろう。
さらに、首都闘ではもう三年以上も前に着工した東京外環道や圏央道の工事が、約二年前から用地買収ができずに棚ざらしになっている。
こういう大都市圏の通過交通をバイパスで迂回路に流す工事は、優先課題としてすぐにも取り組まなくてはいけない。
首都高速の都心環状ルートを通る車の六、七割は別に首都圏から出発したものでも首都圏を行き先とするものでもなく、ほかに高速で行ける道がないから通過しているだけの貨物トラックだと言われている。
こういう通過交通が首都高速の慢性的な渋滞をつくり出し、この高速を使う人すべてに、時間のロスと渋滞がひどければひどいほど多くなる公害排出物の増加をもたらしているわけだ。
しかも、時間ロスと公害排出物の増加の両方で、日本経済に対する損害は、年間で数千億円から一兆円前後になるとも推計され加ている。
だから、こういう慢性渋滞を解消するためのバイパスを建設するような工事は、最優先の政策課題として推進しなければならない。
ただし、都市計画決定済みのルートについては、抜本的に見直しをすべきだ。
この計画で開通している部分の西の端、大泉ジヤンクシヨンから南下する部分は、もう一九六六年に都市計画決定されているのに、ほとんど用地買収が進んでいない。
進んでいないというより、ぜんぜん手がつけられないというのが実情だ。
都市計画決定を受けたルートは、成熟した住宅地の真ん中を強引に突っ切るように線を引いてあるからだ。
首都圏の高速道路網がいかに不条理なつくりになっていしみずそういちるかということに関する権威である清水草一は、こう述べている。
外環道は、都心から約加キロ圏を通過するように計画され、実際埼玉県内の区間は皇居からおよそ却キロのあたりを通っている。
ところが東京都内に入ると、皇居からの距離が日キロ程度に縮まってしまう。
もともと東京は、西や南の方向に最も早く発展してきており、区部を越えても西側だけは東京都ということもあって、中央線沿線は古くから住宅地として開発が進んでいた。
その東京西部を通過する高速道路をなぜ西側でこんなにも都心に近づけたのだろうか。
なぜそういう惨慌たる状態になってしまったかというと、これはもう完壁な老害問題だろう。
たぶんこの計画の路線決定をした時代の審議会メンバーの大半は当時六01七歳の爺さんたちで、「西のほうは田舎ばっかりだから、どこを通したって簡単にできるはずだ。
それなら、なるべく東に近いところを通したほうが便利で良かろう」という調子で、都心に近づけて計画を立ててしまった可能性が高い。
一九六六年前後なら、あと一0キロ都心から離れた場所を計画路線としておけば外環道建設は楽勝だったろう。
のどかな田園風景の場所で用地買収が進んで、住宅地や市街地の発展は、もう着工している外環道を前提にして進んでいたはずだ。
これなら、外環道自体も二年くらい前に完成できていたかもしれない。
「花のお江戸の真ん中は日本橋だ」なんて、そのころでさえ完全にアナクロな思い込みを持った爺さんたちが路線決定権を持っていたから、東京の人口重心がどんどん西に移っていることさえ調べずに、こういうぶざまな計画を決定してしまうことになる。
西にずらさなければ利用価値が低いことは分かりきっていた都営地下鉄大江戸線を、山手線より東にずらしたかたちで作ってしまった大失態とまったく同じ間違いを、ここでもやっていたわけだ。
もういまさら、現在の計画路線を一0キロや二0キロ西へずらしたところで人口密集地帯を突っ切らなければならない事情はちっとも改善されない。
そこで、清水草一も提唱しているように、逆転の発想で、外環道はもうちょっと東にずらして環状八号線の地下道路として整備すべきだろう。
ぼくは前著の『地価暴落はこれからが本番だ。
』で、「都営地下鉄大江戸線は、JR山手線より西側に中心のある環状線にすべきだ」と主張している。
具体的には、麻布十番か赤羽橋のあたりで南東に向かわずに、南西に向かって山手線、東急目黒線といった路線と交差しながら、二子玉川から北へ環八の地下を通って東急大井町線を延伸するかたちで、光が正で円を閉じればいいと思っていたからだ。
しかし、都心の西側に環状路線を作る最大の理由は、東西方向の放射状路線同士の連絡を良くすることだ。
そうすると、付近に郊外電車の駅があまりない環八の真下を使うのは、効率が悪い。
だから、あとで詳しく説明するように、西の環状路線は既存の道路にとらわれずに大深度地下をフル活用して、放射状の郊外電車路線の駅から駅をつないでいくルートを採用すべきだろう。
だから、環八の真下はよろこんで清水の提案に譲ることにする。
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